人生初の介護経験
私の人生で初めての介護経験は勤務獣医となって
８年位が経過した頃の事でした。
私は単身、動物病院に勤務し、
アパートと職場を往復するだけの
一杯一杯の生活をしていました。
そういう折、
家で離れて暮らしていた秋田犬のゴンちゃんが14歳になり、
歩行も排泄も覚束なくなってきて、もう面倒を見切れない、
との事で私が引き取り一緒に暮らす事になりました。
幼い頃の病弱なゴンちゃんに出会ったのは
私が法学部を卒業する頃でした。
この出会いにより既に決まっていた就職先をキャンセルし
獣医大学へ進学する事になったのです。
私にとってゴンちゃんは何よりも大事な宝物となっていきました。
ゴンちゃんは１５歳１０ヶ月まで頑張ってくれましたが
最後の１年間は起立する事も排泄する事も不能になり
寝たきり状態になりました。
私には朝から晩までの勤務があり、
世話できるのは夜から翌朝まで、
とお昼休みだけでした。
誰の助けもなくひとりでゴンちゃんの
治療と介護を続けるのは本当に辛い事でした。
そしてゴンちゃん側からしてみれば
充分なお世話とはいえず辛い思いをさせていたと思います。
介護を続けて行くにつれ
私は肉体的にも精神的にも崩壊状態になり、
絶望的な心情になっていきました。
延命治療をしながら、
この長い辛い介護生活を頑張り続けたのは、
失う事を極度に恐れ、１日も長く生きて欲しい、
という執着心もあったと思います。
後に振り返ってみて、
私の場合はゴンちゃんのため、
というよりは自分のエゴのためだったのではないか、
エゴをゴンちゃんに押し付け、
辛い思いをさせていたのではないか、と思います。
そして…
その思いが３０年経った今でも私の心を苛んでいます。
皆様には、
このような思いをしないよう、
ひとりだけで立ち向かう事のないよう、
後悔のない介護と看取りができるよう、
少しでもその手助けができれば、
と願っております。
院長 長谷川 みどり
